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中小規模の海外現地法人にERPは必要ですか?【後編】

目次

 Ⅰ. 業務ソフトウェア導入を検討するタイミングは?

Ⅱ. 業務ソフトウェアをモジュール単位で区分すると?

(以上、前編に掲載しています。)

Ⅲ. ERPを導入する際のハードルとは?

Ⅳ. ERPは必要ですか?

 III. ERPを導入する際のハードルとは?

 

経営活動の情報を一元管理すること等を目的としてERP導入を推進する際に、会社は幾つかの課題に直面します。

 

まず、初期投資が高く、立ち上げ期間が長いというイメージがあります。確かにオンプレミスのハード・ソフトウェアへの設備投資は、海外現地法人のIT初期投資への予算が限られており、IT専任担当者が不在の状況では資金的、人的コスト負担が大きい場合があります。この対策として、クラウドタイプのシステム構築が考えられ、最近はその選択肢が増えて来ています(ただし、オンプレミス・タイプに比べたカスタマイズ制限、中長期的なコスト累計を考慮する必要があります)。立ち上げ期間に関しては、新設または既存の会社に係わらず、出来るだけ短縮したいところです。ERPは比較的に拡張性が高く、カスタマイズが可能なために、ユーザーとしては次々と追加機能を求めがちであり、これが開発期間の長期化の要因になっています。しかし、要件定義時に必要な機能の優先順位付けを行い、シンプルなシステム選定と構築を心掛けると、開発期間の長期化を避けられます。それに続く、ワークフローとシステムの差異分析、分析結果に基づく各々の修正期間も短縮でき、システム運用までの立ち上げが早くなります。

 

次に、従業員のうちには、自分の仕事がERPに奪われるという危機感が広がることが多いです。海外現地法人の管理者は、頻繁に繰り返される離職や高い人件費負担に頭を悩ませています。そこへ従業員の士気に係わる課題が上乗せされるのは避けたい気持ちは、よく分かります。見方を変えますと、この“危機感”は、本来は標準化できる業務が属人化していて、担当者が退職すると誰も分からなくなってしまう状況と関係していませんでしょうか?労働生産性が低いにも係わらず、高い人件費を負担し続けていませんでしょうか?見通しが厳しい景気動向において、売上の増加、原価の低減へ厳しく取り組む一方で、従業員の労働生産性の向上、必要な人材確保への集中的な資金配分は必須と考えられます。ここは各担当者の業務内容を把握して、付加価値の高いタスクへ移行する動機付けの機会かも知れません。 

 

IV. ERPは必要ですか?

 

ERPに関しては、「世界的な大企業が何億円も投じて導入するもの」、「導入しても使いこなせていない」等の消極的な意見をよく聞きます。しかし、シンプルな機能設定タイプやクラウドタイプであればコスト負担ができる可能性があり、システムの操作性はGUI(Graphical User Interface)の改善により著しく向上しています。他通貨、多言語は標準設定になり、各国税制へ対応済み(対応実績あり)のものが選択できます。中小規模の海外現地法人にとって、以前よりは現実的な選択肢として、ERPの導入を検討することができる状況になって来ています。

 

 

取材協力 Time Rise Engineering Ltd.

香港にて創業1989年以降、約30年にわたり現地日系企業へIT/業務サポートを提供。同社が開発したお客様のオペレーションにピッタリ合わせた業務システム(STEP Pro)では約160社への導入実績があります。

会社ホームページ http://www.tre.com.hk

(写真右より董事長 上野隆様、営業部副経理 穐山巧様)